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おばあちゃんが結婚したかった人

出典: 図解 秘探偵・調査マニュアル
では考えられないが、昔はお互い愛し合っていても結婚できるとは限らなかった(らしい。もちろん、私が実際に知っているわけではありませんが)。だからだろうか、最近、死ぬ前に一度でいいから昔好きだった人にもう一度会いたい、というご老人からの依頼が増えている。先日もそんな依頼を老婦人から受けた。 時は第二次世界大戦直前。相思相愛だったのだが、両家の格式が違うという理由で泣く泣く別れさせられた初恋の相手にどうしても会いたいのだという。もちろん、その初恋の人と別れた後、依頼者は結婚し、幸せな生活を送っていたそうだが、1日として彼のことを忘れた日はなかったという。先日、ご主人に先立たれ、彼に一目でいいから会いたいという気持ちがさらに増していき、ついに調査依頼をしに来たというわけだ。 依頼者は私に、彼と別れるときに交換したという彼の写真を見せてくれた。それは、わずか30m四方ほどの小さなモノクロ写真だった。ご主人にバレないよう足袋の親指の部分に縫い込み、50年以上もの間、華笥の奥にずっとしまい込んでいたのだという。 50年以上も前に別れた人を探すとはさぞかし大変では......とお思いかもしれないが、実はご老人を探すというのは比較的簡単な作業なのだ。まず、若い人たちのようにあまり住まいを移動することがない。なかには数十年前と同じ場所に住んでいる人もいるほどだ。 また、ご老人方には「老人ネットワーク」とでもいえるようなものがあり、ひとたび「X歳の0000さんを探しているのですが」とそこに情報を流すと、色々なところから「この人のことでは」という答えが返ってくるようになっているのだ。 ただし、「伝言ゲーム』のように、ネットワークを移動していくうちに情報が段々と変化していってしまい、最初とは似ても似つかない人が出てくることもあるが…..。 この調査依頼もそんな「老人ネットワーク』のおかげで比較的簡単に対象者を発見することができた。早速、私は対象者の家に電話をした。すると、おばあちゃんが電話に出るではないか!!なんと、対象者の方の伴はまだご健在だったのだ。 私は「〇〇さんいらっしゃいますか」と聞いた。しかし、電話に出たおばあちゃん は、おそらく知らない若い女から電話がかかってくるということは、悪徳商法かなにかの勧誘だろう”とでも思ったのだろう。一向に電話を取り次いでくれない。 まさか、おばあちゃんに「ご主人に会いたいという女性がおりまして・・・・・・」と言うわけにも行かず、大いに困った。 そこで、私は「老人ネットワーク』の1人のおじいちゃんに電話の取り次ぎをお願いした。今度は怪しまれたものの、なんとか対象者に電話を代わってもらうことに成功した。「私、Aへさんに頼まれてあなたを探している者です。<へさんをご存知ですか?」 電話の向こうに気まずい雰囲気が流れているのがわかった。やはり、おばあちゃんが側にいては話し辛いのだろう。少しして、対象者は「はい。知っております」と答えてくれた。私は聞いた。「今じゃ話しにくいですよね。いつ電話すればよろしいでしょうか?」「では、明後日にしてください」「わかりました。では、明後日にまた電話いたします」 そして当日再び[話をすると、おじいちゃんは泣いていた。彼も今まで、一度たりとも依頼者のことを忘れたことはなかったそうだ。そして、あの日交換した写真を彼も持っているというのだ!! 数週間後、ふたりは某老人ホームで無事再開を果たすことができた。本人同士だけではなく、周囲の全員が感動して泣いていた。もちろん私も….....。探偵をやっていてよかったとつくづく思った一瞬だった。